大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム 語源
かいもち(=ぼたもち)
私:共通語「ぼたもち」の事を飛騨方言では「かいもち」という。共通語で「おはぎ」というが、飛騨方言では「おはげ」に音韻変化する。
君:「かいもち」の語源は何か、という命題だけれど、「ぼた」が「かい」に音韻変化するわけはないわね。
私:それは断じてあり得ない。ところで共通語「かゆ粥」の事を飛騨方言では「かい」という。
君:だから、「かいもち」の語源は「かゆもち」ではないかと。
私:いや、それも断じてあり得ない。土田吉左衛門「飛騨のことば」、これは飛騨方言約一万語を記載した大変に立派な書物で、佐七の座右の書だが、土田先生が痛恨のミス、同書にはそのように紹介されている。
君:つまりは、・・間違いなのね。
私:民衆語源といったところかな。判りやすい言葉で言えば安易な発想。語源は「かいもちひ掻餅」でしょ。高校の古文、一年生の一学期で習うよね。宇治拾遺1.12「・・僧たちよひ宵のつれづれに、いざかいもちひせむといひけるを・・」
君:つまりは「かきもちひ」の音便なのね。
私:要はそういう事。実は「かゆもち」説は、古来の語源本にパラパラと出てくるが(世事百談、等)、それを否定する語源本も多く(和漢文操)、軍配は「かきもちひ」にあがる。
君:ほほほ、昔から拘る人は拘るのね。「おはぎ」の語源は何かしら。
私:言うまでもなく女房詞。煮た小豆を散らしつけたものが萩の花に似ている事から。ボタモチの語源は牡丹の花からという説がある。語源学の壮大な旅という事になると、そもそもが萩や牡丹に見立てるという事自体が間違い、つまり全否定の説もある。蒙古語・満州語・台湾のツァリセン族やパイワン族の語・インドのボンベイ地方の方言・マレー語などに同様の音韻があるそうなので、こうなるとハギ・ボタは外来語かもしれない。兎に角、語源に執念を抱く人が世の中にはおられるという事。感服するね。
君:アジアの米文化の国々にハギ・ボタの音韻が存在するのね。それじゃあ、花の出る幕は無いわね。
ほほほ