大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム 音韻

かい(かゆ粥)

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私:共通語「かゆ粥」の事を飛騨方言では「かい」という。アクセントは共通語に同じく平板。飛騨方言では「おかい」とも言い、これも共通語「おかゆ」と同じく平板。
君:ヤ行の子音の問題ね。
私:そういう事。ひとつの例を。以下は日国の抜粋。
★あゆむ【歩】〔自マ五(四)〕(1)足を動かして進む。歩行する。あるく。あゆぐ。あえぶ。あゆぶ。あよぶ。あよむ。→ありく。*万葉集〔8C後〕一四・三四四一「ま遠くの雲居に見ゆる妹がへに何時か到らむ安由売(アユメ)あが駒〈東歌〉」*枕草子〔10C終〕二五・すさまじき物「宵よりさむがりわななきをりける下衆男、いと物うげにあゆみくるを」*源氏物語〔1001~14頃〕末摘花「われと知られじと抜き足にあゆみ給ふに」*方丈記〔1212〕「若(もし)、ありくべき事あれば、みづからあゆむ」*天草本伊曾保物語〔1593〕獅子と、馬の事「イカニモ シズカニ ニュウナンナ フリデ ウマノ ソバニ ayunde (アユンデ) キ」*小学読本〔1884〕〈若林虎三郎〉二「馬車人力車に乗るあり或は歩むあり」(略)語誌(1)類義語「あるく」「ありく」が、足の動作にとどまらぬ移動全体を表わすのに対し、「あゆむ」は、一歩一歩足を進めていく動作に焦点がある。「あるく」「ありく」が、散漫な移動や方々への徘徊をも表わすのに対し、「あゆむ」は一点を目標にした確実な進行を意味する。(2)「あゆぶ」「あよぶ」も同義であるが、中世の説話を中心に用いられている。

★あゆぶ【歩】〔自バ四〕(1)「あゆむ(歩)(1)」に同じ。*百座法談〔1110〕六月一九日「鵝よろこびて太子のおまへにあゆびいたるに」*散木奇歌集〔1128頃〕秋「吹く風にあたりの空を払はせてひとりもあゆぶ秋の月かな」*滑稽本・浮世風呂〔1809~13〕二・下「『チョッ。さきへ歩行(アユビャア)がれ』ト子をしかりながらいで行」(略)

★あよぶ【歩】〔自バ四〕(1)「あゆむ(歩)(1)」に同じ。*宇治拾遺物語〔1221頃〕九・八「聟、顔をかかへて『あらあら』と言ひて臥しまろぶ。鬼はあよび帰りぬ」*土井本周易抄〔1477〕「しりの皮の破た者は、いたうであよばれぬぞ」*四河入海〔17C前〕二三・一「小足にあよふ馬に美人たちを騎て、多くつれて溝山谷遊ぞ」(略)

★あいぶ【歩】〔自バ四〕(「あゆぶ(歩)」の変化した語。江戸時代、安永、天明年間(一七七二~八九)頃の流行語)歩く。出かける。また、いっしょに行く。*雑俳・柳多留‐一一〔1776〕「江戸へあいばんかとつばなうりにいひ」(略)

★あえぶ【歩】〔自バ四〕(「あゆぶ」の変化した語)足を運ぶ。あるく。あいぶ。*洒落本・両国栞〔1771〕「わっちと一っ所に二三度あヱんでみなさヱ」
君:コピペはやめて。要約してね。
私:や行はあ行の拗音。10世紀以前にあ行・や行の「え」の区別が認識されたものの、10世紀頃には既にあ行・や行の「え」の混同が始まり、両者とも「イェ」のように発音され、江戸期にはあ行の「え」に近い発音に変化し、現代に至る。
君:「あゆむ」は万葉集にあるから和語ね。それが後世、というか、江戸時代に「あいぶ・あえぶ」になっているわよ。何か矛盾してしないかしら。
私:僕が論じたのは拗音「ゑ」の全般的な歴史。なにせ拗音なので、「イ・ウ・エ・オ」列の間で千変万化だったのが「あゆむ」だったという事。「かゆ・かい」は「イ・ウ」列の音韻変化。ヤ行からア行へ、という問題ではないんだ。
君:なるほどね。全国の方言の音韻はどうなのかしら。
私:地域は割愛するが「かい」「おかい」「おかいさん」は全国共通方言。変わったところでは、「けこ(青森)」「けぁっこまま(秋田)」。
君:全国共通方言、確かに。全国どこでも通じるわね。 ほほほ

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