大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム 文法各論 否定
三種類の「ない」
私:昨日の否定表現の話題の続き。実は、やはり情報収集不足。投稿後に発見したネット情報がここ。近世に「あらない」から「ない」への短呼化、という骨子は私の気づきと同じだった。
君:今日も否定表現が話題ね。三種類の「ない」とは独立形容詞「無い」、形式形容詞(補助形容詞)「ない」、否定の助動詞「ない」の事でしょ。
私:そう。方言の東西対立があり、東京は三種類の「ない」がある。畿内方言では否定の助動詞は「ず(ぬ)」になるが、残り二つは東京と同じ。
君:東京が大阪に比してスッキリと考えがちよね。
私:うん。ところがどっこい、そうではなかった。古語「なふ」の連体形の「なへ」が「なえ」を経て江戸時代に「ない」になつた。つまりは三種類がそろったのが近世。
君:なるほど。むしろ頑固一徹で古代から変化していないのが畿内方言なのよね。
私:その通り。独立形容詞「無い」は和語のク形容詞「無し」につき、東西問題は無い。万葉集3733に「奈可里世婆ナカリセバ」がある。それどころか形式形容詞「なし」の用例が竹取(漢字仮名交じり文)にある。「ここに使はるる人にもなきに、願ひをかなふることのうれしさ」。江戸語で「あらない」が省略形「ない」になる以前から、つまりは中古語の時代から形式形容詞「なし」が存在した。
君:どうやら補助動詞「あり」の対語であるところの「なし」は古代からのようね。
私:意味論としてだけれど、存在の否定だから独立形容詞「無し」、単なる打ち消しだから形式形容詞「なし」という記載が多いが、結局は同じ意味だと思うのだけれど。この意味の違いが「独立形容詞・形式形容詞」の違いと言うんだ。衒学的、言葉のお遊びという感じだね。
君:つまりは形容詞はひとつ、助動詞もひとつ、ふたつの「ない」、要は、かつては形式形容詞に漢字を当ててしまったあなたの痛恨のミスというだけよ。つまり負け惜しみ。
ほほほ