大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム 語源
かたがる(=かたむく)
私:共通語「かたむく」の事を飛騨方言では「かたがる」というが、全国各地の方言です。語源は動ガ四「かたぐ傾」。「かたがる」は当サイト開設当初の過去記事。敢えて残しておこう。
君:「かたぐ傾」は中古語じゃないわね。
私:丈草発句集(安永3年、1774)の文例が古いようだ。つまりは近世語。
君:和語でない事は当然として、「かた片」を動詞化したものよね。
私:同じく近世語に名詞「かたぎ傾」がある。自ガ四「かたぐ傾」の連用形である事は書かずもがな。「かたぎ傾」とは頸部の筋肉の病気で首が傾いている事。痙性斜頸(けいせいしゃけい)という医学用語がある。古語「首かたげ」の文例もある。「かたげ」の言葉は飛騨方言「かたがる」の語源にヒントを与える。
君:持って回った言い回しは駄目。はっきりとお書きなさいな。
私:はいはい。飛騨方言のみならず全国各地の方言にもなっている「かたがる」は自ガ四「かたぐ傾」+「あり」あたりから来ているんだろうね。複合動詞の延長上にある動詞でしょう。そして本題だが、実は古語動詞「かたぐ」は自他同一の音韻の動詞。四段活用が自動詞で下二段活用が他動詞。未然形と連用形は明らかに音韻が異なるとはいえ、自他の混同は幾らでもあっただろう。これが話し言葉としては嫌われ飛騨方言では自他「かたがる・かたげる」に音韻変化した。共通語としては近代語のあたりから「かたぐ」+「むく」で自カ五「かたむく」になり、他動詞は「かたぶける」から「かたむける」になった。
君:いずれにせよ、近世辺りからの動詞の傾向、自他対をはっきりとさせるという意識から自動詞「かたがる」が生まれたようね。
ほほほ