| 大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム |
| ない(地震) |
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| 僕:長野善光寺界隈、北信地方、を旅行したが地震の事を「ナイナ」と言うんだってねぇ。 君:飛騨ではそうは言わないわね。 僕:うん。帰宅後に早速に調べものを開始したが、小学館日本方言大辞典全三巻に記載が無いのには正直、参ったよ。 君:でもわざわざここに記事を残そうと思ったのにはわけもあるし、語源も判明したからなのね。 僕:語数14万、小学館・標準語引き日本方言語辞典に記載があった。佐藤亮一先生は偉大だ。 君:結論を簡単にね。 僕:地震を意味する方言は、がたがた、じしんびき、じない、どろめき、ない、ないゆるん、なえ、なや、にー、ね、ねー、ねーい、ひない、ゆい、ゆすり、ゆり、ゆる。りくれ。以上。 君:これから類推せよという意味ね。 僕:そう。試されるのは直観。或いは直感を働かす事。同辞典に「ないな」の記載は無いな。ぶっ 君:そんな事はいいから、結論だけ書いてね。 僕:はいはい。古語「なゐ」。紀歌謡91にある。地震の事だ。和語だった。「なゐふる」「なゐゆる」の形で用いられる事から「なゐ」は元来、大地の意味であったようだ。 君:「ふる」は動ラ四「ふる振」かしらね。 僕:待ってたぞ、その言葉。 君:えっ、違ったっけ。 僕:上代語としては動ラ四「ふる觸」じゃないかな。記歌謡78。万葉4328。振動するというよりは接触するという意味。 君:「ゆる」は動ラ四・揺だわね。 僕:うん。それはいいと思う。 君:「ないゆるん」が気になるけれど沖縄かしら。 僕:いい感してるね。その通りだ。本土じゃ有り得ない音韻だからな。 君:「ない」は全国津々浦々に残っていた古語というのが今日の結論ね。 僕:その通り。沖縄にあるので日琉祖語と考えられるし、「なえ」は秋田県雄勝郡。上古の言葉が方言として残っていると、それは全国共通方言でほぼ間違いなし、というような語源学の定石が得られそうだ。 君:それはどうかしら。琉球方言は百歩譲って、或る年代に全国に広まった語彙だってあるでしょ。それに島伝い、海岸伝いに伝わった語彙とか。 僕:今の時代のSNSの若者の語彙もそうだね。 君:多分ね。ところで「地震」の語史もお調べになったのかしら。 僕:まってたぞ、その言葉。 君:ほほほ、漢語ね。 僕:ご名答。 君:いつから。 僕:平安文学だ。漢語と言えば平安文学でしょ。方丈記の文例もある。これは鎌倉か。江戸文学や江戸落語になると「地震神鳴火事爺(をやぢ)」が登場する。 君:古来、もっとも恐れられていたのが地震だったのね。 僕:そう。蛇足ながら「地震」も全国共通方言と考える事ができる。ところで「平安」+「恐れ」のキーワードは? 君:ほほほ、陰陽道よ。安倍晴明。時代のスーパーヒーローだったのよね。 僕:まあ、そうなんだが、科学的には理解不可能。いかさま師だったのでしょう。 君:でも、誰もがうっとりとするかっこいい男だったのよ。 僕:多分ね。でも、宗教家とも言い難いし、本当に困った陰陽道だ。せいぜいが恋占い程度にとどめていたほうがいいと思う。 君:それって、若しかして人生を左右するわよ。 僕:家内と偶然に知り合った日の事だった。お互いの心が「ない」でした。夫婦にとっては運命の出会いだった。 君:つまりお互いが一目ぼれ、迷わず結婚だったのね。よかったわね。ほほほ |
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