大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム 心の旅路 京都
えんばんと
私:株式会社CMサイトがインターネットリサーチした<京都弁!意味が難しい京都府の方言ランキングPart2>のアンケート結果を集計。
※有効回答者数:全年代の男女(性別回答しないを含む)9,944名/調査日:2024年8月6日。
君:結果は?
私:以下の通り。
第1位:えんばんと(あいにく、折り悪しく)(1,240票)
第2位:おけんたい(当然、当たり前)(846票)
第3位:こーとな(地味で上品な様子)(827票)
第4位:せんぐり(何度も)(773票)
第5位:あも(餅)(731票)
第6位:あしあらい(慰労会、打ち上げ)(706票)
第7位:じぶんどき(食事時)(704票)
第8位:てんご(悪ふざけ、いたずら)(700票)
第9位:おはようおかえりやす(いってらっしゃい)(657票)
第10位:あがる・さがる(北へ行く・南へ行く)(564票)
君:今日は第一位「えんばんと」の詳述ね。語源は?
私:ヒントとしては全国共通方言。
君:となると、古語ね。
私:古語も古語、和語といってもいいね。名詞「ゑんば」が語源だろうな。
君:意味は?
私:「とんぼ・とんぼう」の古名だ。「ゑんま」「ゑんぼう」ともいい、「やんま」もその転訛した形と言われている。和名類聚抄(931年 - 938年)に「阿加恵无波」の記載がある。
君:ほほほ、赤トンボの事ね。「えんばんと」は副詞句なので、「と」は格助詞ね。つまりは「えんばんと」は「ゑんばと」の音韻変化という事よね。
私:その通り。格助詞「と」は祝詞にも頻出の古代からの助詞。現代に至るまで意味は変化していない。状態・性質・資格などを表す。「のように」「として」「という様子で」の意味。例としては、整然と、わりとおいしい、など。
君:「ゑんばと」は文字通り「トンボのように」という意味だったのだけれど、トンボの飛行は気まぐれで行き先が定まらない様の比喩で、「あいにく・おり悪しく」の意味に転じたのね。
私:まあ、そんなところでしょう。飛騨方言でも「えんばと」は使うよ。本来の意味、つまりは京都方言のように使う事がある。
君:例文は?
私:えんばと雨がふってきた。
君:なるほど、予期せぬ不幸な事に出会った例えね。
私:ただし、飛騨方言では意味が正反対で使う事もある。
君:例文は?
私:出かけて行ったら、えんばと道で会った。
君:偶然にも、運よく、という意味ね。
私:このように「えんばと」は抽象表現につき、全国共通方言だが、多義語化している。また、「えんば」もかなりの音韻変化をしている。ただし、方言学で大切なのは stemming and lemmatization 、このセンスが問われる学問。要は古代の共通の音韻を見つける事。方言学とは・・・現代語たる各地の方言を古代の共通音韻で合理的に説明する事・・・それ以上でもそれ以下でもない。
君:つまりは「えんばと」をよい意味で使っても「よい塩梅と」が語源ではなさそうね。
ほほほ