大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム 多義語

かかりあい

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私:「かかりあい掛合・係合」は古語で、日常語たる口語で用いられる事はないでしょう。歌舞伎・人情本などによく出てくる近世語。飛騨方言では「かかりあい」が現役の言葉で、しかも多義語になっている。多義語の理由は幾つかあるかな。
君:古語「かかりあい」が抽象語だからね。
私:その通り。1.相手のやり方に対して苦情を言う事、2.人や物事とあるつながりを持っている事、3.他人の事件に関して罪や損害、迷惑などを受ける事、4.未払いの金・掛け売りの未回収分。
君:あらあら、飛騨方言ではこれらの意味全てを示す多義語なのかしら。
私:いや、そうではない。飛騨方言では専ら、人や物事とあるつながりを持っている事を示す。口語で強いて言えば「かかわり」のような意味の言葉。ただし、意味が、江戸時代だろうか、当初は良い人間関係という意味で用いられたのであろうが、近世語・現代語では「良いかかわり」の意味でも「悪いかかわり」の意味でも用いられるようになった。
君:具体例がいいわよ。
私:「あいつの仕事はかかりあいやで、駄目や」ならば「仕事がいい加減・出鱈目・杜撰」という意味。「そんなに急がんでも、まあ、かかりあいにやっておきゃあええ」は「仕事がほどほどで、暇をかけてのんびりとマイペースを保つ事」という意味。つまり、良い意味。相対的には、悪い意味で用いる事が多いと思う。「かかり合いな人」と言えば、やる異なす事が信用のおけない人、というような意味であり、上手に手を抜いてでもそつなく仕事をこなす人、という意味にはならないね。
君:当然ながら、全国共通方言よね。
私:ところがそうではないようだ。小学館日本方言大辞典の記載を信ずる限りは、飛騨の俚言。また飛騨では「かかりあい」が音韻変化して、「かかりえ」「かかりげ」「かかれ」「かがれ」などになる。
君:歌舞伎・人情本の言葉が飛騨だけの俚言とはおそれいったわね。 ほほほ

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