大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム 音韻

露出形と被覆形

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私:音韻学で避けて通れない問題が露出形と被覆形。
君:一言で説明してね。
私:母音には二種類ある。広母音(ひろぼいん)と狭母音(せまぼいん)。ひとつの単語に広母音・狭母音の二つの音韻がある現象。例は「さかや酒屋」と「さけ酒」。前者が広母音で被覆形、後者が狭母音で露出形。これは母音交替とは意味が違う。
君:それはわかるわ。母音交替とは、母音が変化して古いほうが消滅し、新しいほうが現在に生きている現象だから。
私:その通り。露出形と被覆形は共に現在に生きている音韻。では、露出形と被覆形のご先祖様の音韻は何だったのだろう。いつのまにか分裂して現代に至るのは間違いないけれど。
君:おそらく上代からね。
私:その通り。上代特殊仮名遣いの時代から。つまりは万葉の昔から二つの音韻が存在。被覆形が古く、露出形が新しいという事でもなさそうだ。露出形の多くは独立語であるのに対して、被覆性は複合語の前項部分が多い。これって日琉祖語の時代からかもしれない。
君:でも、分裂したきっかけというものがあるのでしょ。
私:日本語に文法らしいものが出来たから、という事。露出形=被覆形+ i-mutation 。
君: i-mutation とは?
私:古代英語に生じた音韻変化。つまり、 i-mutation と上代特殊仮名遣いには広母音・狭母音という共通項があり、これは言語学のテーマかな、と勝手に想像。ここで大問題。露出形と被覆形という言葉、やめていただきたい。
君:どうして?
私:被覆形に i-mutation を覆いかぶせたのが露出形であるという言葉のセンスがね。逆の定義ならわかります。
君:でも最初に定義なさった人の勝ちよ。どなた?
私:有坂秀世だ。有坂秀世「国語にあらはれる一種の母音交替について」(here)
君:あらあら、有坂先生が命名なさったのでは誰も逆らえないわね。 ほほほ

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