大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム いろは歳時記
うそぶえ,よさり
私:「いろは歳時記」の一句、「うそぶえを 吹くなよ よさりは どろぼうがくる」。この句は子供のしつけを歌った川柳。
君:「よさり」は古語「よさり」「よさりつかた」あたりからの言葉で、全国共通方言ね。
私:その通り。夜さり、「さる」は、その時になる・来る、の意味だ。「つ」は格助詞。つまり「よさりつかた」は「よさり」になるころ、つまりは夕方の事。今回の川柳の場合は、真っ暗になると泥棒が来るという意味なので、古語「よさり(夜、夜分)」の意味だ。
君:「うそぶえ」の意味が問題ね。
私:あまり難しく考えなくてもいいよ。単に口笛の意味だね。方言辞典にしかなく古語辞典には出てこない言葉なので、首をかしげざるを得ないが、全国共通方言だ。岩手では、オショビ・オショッペ・オソッベ・オソブエ・オソペ・オソンベ・ソホッペ・ホソベ・ホゾベ、と多彩な音韻になる。
君:ほほほ、ちょっと失礼。
私:えっ、若しかして、やはり「うそぶえ」は古語かい。
君:その通りね。口笛の古語は「うそ嘯」。重要和語動詞に他カ四「うそふく嘯」があって、万葉集1753にもあるわよ(木根取 嘯鳴登)。ふうふう言う、が原義で、後世に多義語化して、口笛の言葉に取って代わられたようね。狂言の面の一種に「うそふき」があるわよ。「うそふきがお嘯顔」は俳諧の語彙。
私:Cuchibuyeuo (クチブエヲ)フク、が日葡辞書にある。つまりは古代語「うそふき」は近世語「くちぶえ」になり、現代語に至るんだね。
君:これで意味が判ったわ。子供のしつけとしては、夜中に泥棒さん達の合図である口笛を吹いてはいけませんよ、という事ね。それにしても、音を出したらばれてしまうから駄目よね。
私:そういうのをね、ウソは泥棒の始まり、と言うんだよ。
君:なるほど、一本取られたわ。
ほほほ