大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム いろは歳時記
おはち,からね,しる
私:「いろは歳時記」の一句、「るす番は おはちもとっくりも からねしる」。この句は川柳だ。
君:句の内容を簡単に共通語で説明してね。
私:「からねしる」が飛騨方言の部分。意味は「空にする」。だから、句の意味としては・・留守番では特に何もすることがないので、米びつをよそってご飯を食べたり、酒を徳利についだり、ついつい、米びつも酒瓶も空にしてしまう・・という事。
君:「おはち」は共通語ね。
私:その通り。当サイトで繰り返し話題としてきた事、「気づかない共通語」だ。この水墨画集には注釈がついていて、飛騨方言部分は共通語で説明するという方針のようだ。「おはち」は米びつの事、との注釈があるので、岩島周一氏が「おはち」を飛騨方言と勘違いしておられる事がわかる。
君:歌の品位を損なうものではないわよね。
私:勿論です。浅学ながら一言、「おはち御鉢」は江戸時代からの女言葉、特に女中詞とで言うべき言葉。寺院の供米(くまい)。転じて、飯を入れておく木製の器具。「おひつ」とも言う。
君:順番が来る事を「おはちが回る」というわよね。
私:これも江戸時代からの言葉だ。人が多いとなかなか飯櫃が回ってこない事からの転。膝栗毛・初や浮世床・初に文例がある。
君:格助詞「に」の音韻変化「ね」はどうかしら。
私:これも飛騨方言特有の母音交替だろう。共通語「そんなに」を「そんね」という事があるね。
君:サ変動詞「しる」はどうかしら。
私:中部方言では一般的に下一段活用「せる」が多いと理解していたが、土田吉左衛門・飛騨のことば、にもサ変「しる」の記載があった。例文は、小便しる。
君:戦前のこれといって何も娯楽の無かった時代の男の暇つぶしはこんなものでした、という句ね。
ほほほ