大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム いろは歳時記
えてひき,せんな,こどもわら
私:「いろは歳時記」の一句、「えてひきせんな としごに双子に こどもわら」。この川柳のお題は、教育における差別待遇の防止勧告(文科省)。
君:句の内容を簡単に共通語で説明してね。
私:飛騨方言の意味解析としては難問になるのかな。飛騨方言「えてひきせんな」は共通語「えこひいき依怙贔屓するな」の意味。飛騨方言「こどもわら」は共通語「子供達」の意味。つまり逐語訳すると・・えこひいきしてはダメ 年子も 双子も 子沢山も・・という事になる。実際は逆の意味だね。
君:わかるわよ。つまりは年子や双子の二人に対しては兄と弟の関係があるけれど、二人を平等に扱いなさい、子沢山の兄弟姉妹の場合も同様で長男だけを贔屓にするのではなく皆を平等に扱いなさい、という事ね。
私:その通り。年子、双子、子沢山、この三者を依怙贔屓してはダメという意味ではない。
君:各論に行きましょう。「えてひき(えこひいき)」は音韻変化の問題よね。
私:その通り。
君:「せんな」が何故、「するな」になるか、についはどう。
私:飛騨方言ではサ変「する」は下一「せる」、勧誘の意味で「せむ」に禁止の助動詞「な」が下接する。例えば飛騨方言「せんがよ・せまいがよ」は共に「しましょうよ」の意味です。
君:「せむとすな」の短呼化と理解すればいいわね。「こどもわら」の語源は何かしら。
私:うん、これは謎に満ちている。土田吉左坐衛門「飛騨のことば」には子供輩の当て字で説明してある。一理はあるね。小学館日本方言大辞典には「こどもわら」の記載がない。あるのは「こどもびら(子供達、山形・秋田)」の記載。同書には「わら我等」の記載があって、第一人称代名詞として全国共通方言のようだ。
君:「こどもわら」はどうやら飛騨の俚言ね。
私:要するにそういう事です。岩島周一さんの注釈は、草原のように子供がたくさんいること、だが、これまた謎めいた注釈だね。飛騨方言でも「わら」は人称代名詞でしょ。しかも第二人称代名詞、つまり対称。
君:土田・岩島のどちらに軍配を上げるか、実はどうでもいい事よ。
ほほほ