大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム いろは歳時記
もれあげ,はらほうず
私:「いろは歳時記」の一句、「もれあげの 晩は秋もち はらほうず」。これは秋の収穫の句。飛騨の明治・大正あたりの生活風物詩といったところだね。
君:句の内容を簡単に共通語で説明してね。
私:その前に、小学校の国語の授業のような話で大変に恐縮ですが、飛騨方言の部分だけを抜き書きしてみて。
君:「もれあけ」「はらほうず」この二つの名詞かしら。
私:その通り。「秋もち」が方言かどうかは微妙、まずこれから行こう。秋の季語以外にわかる事は。
君:秋餅という事ね。秋にお餅を食べるとなると、何かのお祝いという事、つまりは収穫祭の餅という事かしら。
私:大正解だ。とりあえず「秋もち」は飛騨方言ではなく、一般名詞という事にしておこう。収穫祭に餅をつくか、これは最早、民俗学の問題。純粋に国語学のみを扱う方言学の課題ではない。
君:柳田國男先生は残念にお思いよ。
私:かもね。先を急ごう。「もれあげ」は漏れ上げということなんだが、「漏れ」とは庭や作業小屋に稲穂などが漏れている事だ。だから「もれあげ」って何のことかな。
君:ほほほ、ヒントは収穫祭だから、つまりは庭や作業小屋に漏れていた稲穂を丁寧に全て拾い集める事ね。お米一粒でも大切に思う気持ちから出てくる行動という事なんでしょ。
私:おう、またもや正解だ。では、「はらほうず」とはどんな意味かな。ヒントは餅。
君:簡単すぎるわよ。つまりは「おなかいっぱい」という意味でしょ。漢字なら腹方図よ。
私:その通りだ。方図は古語、物事の限り。切り、際限という意味。日葡辞書には Fozu がある。つまりは中世語だ。漢語の由来かな。現代語でも野放図という言葉があるよね。つまりは・・・庭や作業小屋に漏れていた稲穂を残らず拾い集めて、晩には収穫祭のお餅を搗いて、それを腹いっぱい食べます・・・という秋の句。
君:うーん、ことしゃ豊年満作、幸福度が満点ね。
ほほほ