大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム いろは歳時記
ずぼりこむ,つつわら,あばみ
私:「いろは歳時記」の一句、「ずぼりこむ こたつでつつわら あばみでき」。
君:句の内容を簡単に共通語で説明してね。
私:共通語部分は炬燵と動ラ五・出来る。当然ながら冬の句。上の句の動詞はオノマトペだ。つまりは、ずぼっ・ずぼずぼ・ずぼん、等々と同じで「すっぽりと(体ごと)もぐりこむ」の意味。「つつわら」は身体部分、「あばみ」は病名。これがヒント。ちょいと考えてみてね。
君:意地悪ね。炬燵に潜り込んで、身体部分が病名の冬の句ならば足に出来たシモヤケ以外とか、足の低温火傷とか。
私:ご名答。「つつわら」は足の事だ。これは古語「つと苞」から来ている。藁(わら)を束ねて編んだりたばねたりした容器の事だ。中に卵とか納豆などを包む。わらづと藁苞とも言う。贈り物とか旅の土産の意味で家苞(いえづと)という言葉もある。つまりは「つつわら」の語源は「つと」+「わら藁」で、全国各地の方言になっているし、多義語化している。
君:なるほど。多義語がヒントという訳ね。つまりは藁苞は紡錘形という事で、つまりは足は足でも「ふくらはぎ」の事を示すのだわ。
私:その通りだ。方言学の楽しみといってもいいが、その語源の解析は古語の勉強そのものであり日本語の歴史が学べるし、謎解きの頓智ゲームと言ってもいい。
君:そうなると残るは「あまみ」の解釈だけね。シモヤケかしら。火傷かしら。
私:正式の病名は温熱性紅斑 Erythema ab igne, Livedoecalore, Livedo, or thermao erythema で火傷の一種。日本語の一般名としては「火だこ」と呼ばれている。長時間にわたり熱に暴露される事により皮膚に紋様、つまり色素沈着が生ずる事。「あばみ」は古語辞典になく、小学館方言辞典に「あまみ」の見出しで全国各地の方言として記載がある。各種の音韻変化もあり、飛騨では「あばみ」。古語辞典を細かく調べたが語源には行きつかなかった。ただし「あまみ」の「あ」は「あ足」から来ている事だけは間違いなさそうだ。日本語の最重要和語といってもいいね。「あうら足占」「あゆひ足結」「あなうら足裏」など、複合語に用いられる事が多い。万葉仮名(no. 3387)としては「あ安」が足に相当する(3387 安能於登世受 由可牟古馬母我 可豆思加乃 麻末乃都藝波思 夜麻受可欲波牟)。「まみ」が何かとなると、私の頭では見当もつかない。
君:色素沈着とは、ショックだわ。嗚呼、まあ、みっともない。
ほほほ