大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム 飛騨方言敬語

おためらいなさりましょ

戻る

私:表題だが、飛騨方言でも最高級敬語という事になろうかね。
君:まずは自ハ四「ためらふ」の説明からね。
私:古代畿内方言、中央での古語の解釈だね。元々の意味は現代口語に通ずる意味で、躊躇する・高ぶった気持ちを落ち着かせる、という意味だが、あっと言う間に多義語動詞になった。キーワードがある。
君:抽象ね。
私:その通り。具象に対して抽象、つまり心の動きを表す動詞。病気の勢いを和らげる・苦しい気分などを押し鎮める、という意味が加わった。打保や源氏に例がある。
君:平安の当時と言えば医学・医療というものはなく、感染症の概念もなく、怪我はいざ知らず、ひとたび病にかかるや心の持ちようだけが頼りの時代だったのね。
私:そう。早まった気持ちにならず、神仏を信じ、安静が一番、という時に肝要なのが「ためらふ」気持ち。
君:要は平安以降、中央では「自分自身の健康を気遣う」という意味が廃れていったものの、飛騨方言には現在も生きているという事なのよね。
私:そうだね。中央では、行動に移るか移るまいか躊躇する・もじもじする、事のさまをあれこれ思いめぐらす・様子を伺いみる、等に意味に変化して現代に至るという事だ。飛騨方言でも同様の意味で用いられるから「ためらう」の多義性は飛騨方言のほうが共通語よりも広い。
君:それにしても長いフレーズね。
私:日常会話において、ここまで長いのを使う事はあまりないね。普通は、「ためいらいんさい」「ためらいない」「ためらいないよ」。ためぐちとしては「ためらってね」「ためらってな」、男言葉としては「ためらえよ」「ためらえ」。
君:「ためらいない」については説明が必要ね。
私:「ためらいなさい」の短呼化だ。飛騨方言では「たべない」は「おたべなさい」の意味の命令形。
君:となると、飛騨方言での「おためらいなさりましょ」の否定形、つまり「ドーンと行け」の意味は「おためらいなさらないでください」になるわね。 ほほほ

ページ先頭に戻る