大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム 卑罵語

おぞくたい(非常に悪い)3

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私:飛騨方言の形ク「おぞくたい」は最大限の卑罵表現。語幹前半「おぞ」は古語形ク「おずし」、語幹後半「くた」はこれまた古語「あくた芥」かと思われる。ここまでは議論の必要がないと思うけれど、「おぞくたい」がどうして形クなんだろう。
君:全国の方言を探しても形シクが無かったのね。
私:そうなんだよ。「おぞくたしい」という方言は存在しない。
君:無いという情報も、或る意味、重要ね。
私:そうだね。「おぞくたい」は情意表現形容詞(例えば嬉しい)ではなく属性表現形容詞(例えば赤い)という事になる。
君:「おぞくたい身なり」などという言い方が本来の言い回しであって、「おぞくたい根性」というのは、その後に意味が敷衍して出来た結果であって本来の用法ではない、とおっしゃりたいのね。
私:たかが飛騨方言だからね。理論通りではないだろう。これ以上、議論をしても仕方ない。ところで、もうひとつ。そもそも形容詞というものは接尾ラ四「がる」をつけて動詞になるものがある。
君:ほほほ、うれしがる(=嬉しい素振りをする)などね。
私:そう。飛騨方言では「おぞくたがる(=身なりを見すぼらしいと断定する、相手の品性を下等とみなす)」などの言い方がある。これも日本語の特色というか、接尾ラ四「がる」を接続させて動詞になるのは大半がシク活用形の形容詞。
君:「さむがる、つよがる」などと言うけれど、確かに他には思い浮かばないわね。
私:「こひしがる・さみしがる」なんてのは実にしっくりと来る例だね。
君:竹取に「あやしがりて寄りてみるに」なんてのがあるわよ。
私:若しかして、飛騨方言の特徴かもしれないが、「なんでもかんでもガル」という規則で、形ク・形シクの別なく、大半の形容詞で動詞化が可能なのかも。例えば「おそがい(=恐ろしい)・おそががる(=恐ろしがる)」。もっとも、共通語でも「きたない・きたながる」などと言うかな。
君:「がる」の語源って何だったかしらね。四段活用だから元は動詞よね。
私:「げある気有・気在」だな。形ク・形シク共に連用形で体言に品詞の転成が生じるから、形ク・形シクを問わず接尾ラ四「がる」が接続するのは不思議なことではない。
君:それでも流石に「あかがる(=赤いと思う)」とは言わないから、形ク+接尾ラ四「がる」は廃れてしまい、形シク+接尾ラ四「がる」が残ったのが日本語というわけで、飛騨方言は進化が遅いという事なのかもしれないわ。 ほほほ

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