一列ごとにひとつの飛騨方言の助動詞に対応する共通語の助動詞を吟味し、
その活用がどの程度、共通語と似通っているか、まるばつで示してみました。
飛騨方言 共通語 <−−−−−−類似性−−−−−−>
種類 の語 の語 未然 連用 終止 連体 仮定 命令 総合点
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
否定 ない ない ○ ×う ○ ○ ×ゃ − ×
否定 ん ん(ぬ)○ ○ ○ ○ ×ゃ − ○
完了 た た ○ − ○ ○ ○ − ◎
・過去
存続
推量 う う − − ○ ○ − − ◎
推量 よう よう − − ○ ○ − − ◎
推量 らしい らしい ○ ×う ○ ○ ×ゃ − ×
推量 まい まい − − ○ ○ − − ◎
推量 そうや そうだ − ○ ×や − ○ − ×
指定 や だ ×や ×や ×や ○ ○ − ×
指定 です です ○ ○ ○ ○ − − ◎
指定 である である ○ ○ ○ ○ ×ゃ ×よ ×
比況 ようや ようだ ×や ×や ×や ○ ○ − ×
様態 そうや そうだ ×や ×や ×や ○ ○ − ×
自発 れる れる ○ ○ ○ ○ ×ゃ ○ ○
可能
受身
自発 られる られる ○ ○ ○ ○ ×ゃ ○ ○
可能
受身
使役 せる せる ○ ○ ○ ○ ×ゃ ○ ○
使役 させる させる ○ ○ ○ ○ ×ゃ ○ ○
使役 しめる しめる ○ ○ ○ ○ ×ゃ ○ ○
尊敬 れる れる ○ ○ ○ ○ ×ゃ ○ ○
尊敬 られる られる ○ ○ ○ ○ ×ゃ ○ ○
丁寧 ます ます ○ ○ ○ ○ ×ゃ × ○(*)
希求 たい たい ○ ×う ○ ○ ×ゃ − ×
その一、記号の説明
○印=各々の活用で、共通語と飛騨方言で同じ活用である、という意味です。
−印=共通語にそもそも活用がないというものです。従って当然ながら飛騨方言にも対応する活用はありません。
飛騨方言も日本語である以上、共通語にない活用は飛騨方言にも必ず無しです。
×う=飛騨方言としてはウ音便化するのが自然で、そうしないとまるっきり飛騨方言らしくない、という意味です。
×ゃ=例えば"なければ"という共通語に対して、飛騨方言では"なけりゃ"が自然な言い方という意味です。
×や=そもそも語が、共通語とまるっきり異なり、従って終止形においては共通語と異なる事を示しています。
終止形以外の活用においても、飛騨方言では"や"に置換されて活用するので、
根本的に共通語とは異なる助動詞といってもよい、という意味です。
×よ=飛騨方言での命令形は、であれよ、です。
その二、総合点の説明
×印=共通語とは明らかに異なる語、あるいは、異なる活用、あるいは、飛騨方言特有の音便変化、の幾つかがあり、
飛騨方言特有の助動詞となっているものを示します。
○印=仮定形において、飛騨方言と共通語とでは少し異なるものを示します。
共通語のまま話しても飛騨方言でないとは言えませんが、なきゃ、そうすりゃ、などと活用したほうが俄然、飛騨方言らしくなります。
◎印=は飛騨方言と共通語と何もかもが同じ活用で全く変わらないものを示しています。
(*)命令形をのぞく。
その三、総括
★飛騨方言では共通語と同じ助動詞は約半数です。
★〜そうや、〜ようや、などの言い回しが飛騨方言の助動詞の特徴です。
★また連用形でウ音便となる助動詞があるというのも特徴です。
★更には、ほとんどの助動詞の仮定形では、なきゃ、らしけりゃ、させりゃ、等、に活用されるのが普通です。
★ところが、終止形が、や、でおわる飛騨方言特有の助動詞の仮定形は、きゃ、りゃ、りゃ、等に活用されません。
全て共通語とおなじで、そうや−>そうなら、や−>なら、ようや−>ようなら、です。
★です、ます調で話すと飛騨方言は共通語と変わりません。一方、だ調で話す飛騨方言は共通語とは相当に異なります。
★飛騨方言では男性が用いる命令形の末語は全て、よ、です。女性が用いる命令形は全て共通語と異なりますが割愛します。
★丁寧語・ます、の命令形は飛騨方言と共通語では異なります。飛騨方言における丁寧語の表現は各種あり、本文法欄の別稿の通りです。
そこを読んでくれませ、じゃなかった、読んでくれんさい。