大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム 民俗学
せいこ背負子
私:「しょいこ背負子」は共通語だとおもうけれど、荷物を背中に背負うツール。今でも山小屋へ物資を運ぶ担ぎ屋さんというご職業の道具。
君:飛騨方言では音韻変化して「せいこ」になるのね。
私:うん。但し、正しくは仮名表記で長音記号の表記。つまりは「セーコ」。
君:「せいこ」の表記では駄目なのね。
私:方言学辞典の見出しを検索する場合は、長音は長音記号で、という原則を知っていないと目的の単語にたどり着けないね。平仮名「せーこ」の辞典が寧ろ多いかもしれない。
君:今日のお話は面白くないわね。
私:実は、本日は家族でお寿司屋さんに行った。そこで目についた言葉が「せいこガニ」。日本海の珍味といってもいいね。越前ガニのメスで、オスよりも一回り小さいが卵を持っているので絶品。資源保護のために漁期が二カ月に限られるので値段は高い。当然ながら、その語源は背負子蟹。但し、卵を背負うといってもメスの体内。
君:方言の事ばかり考えているから、お寿司屋さんでもそのような話になるのね。
私:ああ。帰宅してネット検索を開始した。「せいこガニ」あるいは「せいこがに」の表記ばかり。「セーコガニ」の表記は皆無。兵庫県辺りでは「せこがに」というらしい。ところで、共通語では「背負い込む」とか「背負い投げ」などというが、片や、古語辞典を見ると、江戸の滑稽本あたりに「しょいなげ」「しょいこむ」があるじゃないか。
君:俗っぽい言い方という事で近世語として存在したものの、消滅して近代語になりえなかったという事ね。
私:その通り。言海に「しょいなげ」「しょいこむ」の記載は無い。広辞苑には「しょいこ」「しょいこむ」の二語の記載はある。
君:つまりは「しょいなげ」だけが近世語として生まれて消滅し、近代語或いは現代語としては語源たる「背負い投げ」が復活を果たしているという事なのよね。
ほほほ