飛騨方言名詞「そめ」ですが、意味は「かかし案山子」だそうです。私の家は代々が農家で、生まれ育った(1953-72)村も大半が農林業という寒村でしたが、うまれてこのかた、聞いた事がないので、私にとっては幻の飛騨方言という事になります。ただし小学館・日本方言辞典(ざっと15万語収載)には、案山子を意味する飛騨地方の言葉として「そーど」「そめ」の二つが紹介されていました。「そーど」が話される地域は飛騨のみの記載ですから、これは俚言でしょうね。「そめ」は長野県南部・岐阜県・愛知県・静岡県、となっていました。
俚言「そーど」についてはどの古語辞典にも記載があるのですが、「そほど」「そほづ(そほど、の転)」で神代、上代語のようですね。岩波古語には発音sofodo の記載もありました。ただし案山子の意味ではなく、語源としてはアウトです。
問題は「そめ」の語源ですが、重要情報として唯一、ご紹介に足るのが土田吉左衛門辞書「飛騨のことば」です。そめ(名詞) 曽米。案山子。雀・おしどり等の害を防ぐために鳥、又はその羽・網・人の形をしたもの等を用いる。単に「そめ」という事は少なく、次のように言う。雀のそめ(雀おどし)・田のそめ(田に立つ案山子)等。 更には、飛州志に「田畑に立つる鳥おどし也。他州のかがし云に同じ」の記載があるようです。
ネット情報・飛騨白川郷の民謡によれば、「おけさヨーおけさ見て来て 家のかか見ればヨー とかく家のかか ソーレ 獅子のそめヨー」、つまりは、村祭りのきれいどころの娘さんたちのおけさ踊りを見て来て、我が家の奥方を見れば、獅子舞の獅子が案山子のように突っ立っていると表現するしかないね」という意味のようですね。このあたりが語源のヒントでしょうか。いただけないのが「曽米」、古語辞典はおろか、調べられる限りの辞典になく、土田先生の造語かな、と考えたくなります。
「かかし」という清音は近世の関東の発音にて、めでたく共通語に認定されたというわけで、方言学の一口知識ですね。「嗅がせ」という言葉については民俗学の祖・柳田國男先生が、かたつむり以上に大好きだった事も有名ですね。yachikusakusaki's blogなどをご参考までに。画像はいわしの頭を大量に焼いて、棒に突き刺し畦に立てるという、元祖・かがし神事、本当に見るからに臭い感じがしますね。私は医者だから猶更かもしれませんが、煙草の臭いが大の苦手です。焼き魚より煮魚が好きですが、さんまだけは大好きです。
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