大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム 語源学

複合語の短縮形

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私:語源学とアクセント学の各論に記載の通りだが、飛騨の俚言「がで(=分量、平板アクセント)」の語源は「使ひ出」で決まりだが、言われてみれば当然の事であるものの、語源を発見するというか、気づくまでに数カ月以上かかってしまった事が今となっては懐かしい。
君:「がで」は複合語の短縮形というわけね。
私:その通り。まずは基本中の基礎という事で、言葉はアクセント学的にはおおよそ四種類に分類できる。単純語 simplex、複合語 closed compound 、転成語 transliteration word、分離語 open compound or hyphenated compound。単純語の語源を考える事はほとんどナンセンスに近い。犬の事を日本語ではイヌ、英語ではドッグというのは何故か、これの解答はありません。
君:複合語、転成語、分離語の三者は単純語の掛け合わせなので、元々の単純語をアクセントの規則を元に類推できそうね。蓋然性が極めて高い場合には語源として断定できるという意味ね。
私:早い話がそういう事。
君:三者の違いは?
私:転成語も分離語も語源学で問題になる事はない。転成語は主として和語の単純語が形を変えて他の品詞及び用法に転じるものであり、元の語のアクセントによって定まるのが常。あがり、すし、みえる、はなはだしい。分離語は前項と後項が複合せず、息の切れ目があってそれぞれのアクセントをそのまま生かすもの。秋の七草、奥の細道、春一番、等々。
君:ほほほ、酸っぱいという意味の古語形容詞「すし酸」が寿司の語源なのね。となると語源学的に問題なのは複合語ね。
私:うん。そして複合語には三種類あって複合の程度が強いものを癒合語(例、青葉)といい、弱いものを接合語(例、木の葉)といい、その中間を結合語(例、葉桜)という。
君:それはいいかげんね。
私:いやいや。接合語のアクセントは必ず前項部分に出現する。癒合語は前項部分のアクセントが変わる。気づかないで使っているだけ。複合語の語源探しは大変だ。
君:それでもアクセントを決め手として複合語であると見破る事が大切ね。その例が飛騨の俚言「がで」。
私:その通り。平板アクセント名詞「がで」は「が」+「で」の複合語、然も癒合語で決まりだな。
君:どうしてそんな事がわかるのかしら。
私:「が」は「つかひ」の短呼化でしょう。「で出」は一拍名詞だが動ダ下ニ「いづ出」連用形の名詞化で決まり。「使い出」の類義語に「飲み出」がある。「飲む」は頭高だが、「飲み出」になるとアクセント核は「で」に移る。同様の理屈にて「がで」は癒合語。
君:つまりは「がで」の語源は「つかふ」+「いづ」の複合動詞であるといいたいのよね。然も二者ともに短縮形となってしまっているので、語源に気づくのは至難の業だったわね。
私:その通り。然も「が」は語頭のモーラの脱落。こうなるとお手上げ。
君:つまりは辞典の隅から隅まで漁らないとその言葉がみつからないというわけね。ご苦労様でした。 ほほほ

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