大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム 

こちがい(=鉢合わせ)

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私:共通語「はちあわせ鉢合」の事を飛騨方言では「こちがい」という。どうやら俚言らしい。つまりは飛騨以外には見られない音韻。しかも、この音韻は飛騨で「こつがい」「かちがい」などと更なる変化をしているから、この謎解きは上級問題といったところかな。
君:そんな事はどうでもいいから、さっさと語源をばらしなさいよ。あれこれ調べて判明したんでしょ。
私:その通り。手元にはだいたいの方言書籍があるので、あちらこちらを開けば、語源が飛び込んでくるという感じだね。日国に答えがある。名「かちあひ搗合」、かちあう事、衝突する事、棒や槍などで互いに打ち合う事。
君:「かちあわせ搗合」ともいうわよね。「はちあわせ鉢合」と音韻学的に繋がっている事は直感できるわ。どちらかが語源で、もう一方は派生語という事かしら。
私:鋭いご指摘だ。僕も当然ながらそう考えた。但し、両語とも近世語。歌舞伎などに出てくる。同時代の言葉だ。つまりは語誌的には同格の言葉だね。漢字も調べた。「搗」の国訓は「かてて加えて、その上に」、「鉢」は鉢の形をした頭頂部の辺り、頭蓋骨の事。
君:どうやら近代語としては「はちあわせ鉢合」が生き延びたので、中央の言葉としても「かちあひ搗合」は死語。ところが飛騨方言にだけ、「かちあひ」の音韻が残り、然もその後に「こつがい・こちがい・かちがい」と三通りにも変化してしまった、という事に気づいたのね。
私:左様でございます。
君:こんなお遊びのどこが面白いのか、とお考えのかたが多いのじゃないかしら。
私:これも簡単に一言。私の歳を考えると、これが大変に合っているんだよ。人間の言語能力は六十代から七十代がピークだそうで。複数言語を自由に操れるしね。これでも若い頃は量子力学みたいな事を少しはかじっていたんだぜ。今はもう無理。カミオカンデもミューオンもさっぱりわからない。
君:佐七君は方言学との「こちがい」がお似合いね。 ほほほ

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