大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム 語源
(布団を)はぐる
私:共通語では「赤ん坊がはいで寝ている布団を母親がそっとかけてあげる」の言い方が一般的かな。その一方で、同様の動作を飛騨方言では布団を「はぐる」「着る」と言うよね。
君:微妙ね。ニュアンスとしては飛騨方言「布団をはぐる」は「赤ん坊が汗をかいて熱そうなので母親が布団をはぐってあげて、ついでにおむつを替えてあげる」とか言うのじゃないかしら。
私:なるほど。でも「やんちゃな赤ちゃんなのでどうしても布団をはぐってまう」とか言うよ。
君:他動詞なのに自動詞的現象ね。でも無意識の状態であれなかれ、他動詞である事には違いないわ。
私:方言動詞「はぐる」の総括をしよう。小学館日本方言大辞典の記載の全て。
1はぎとる、山形県・ふとんをはぐる
2紙を数える、茨城県稲敷郡
3暴露する、佐渡・相手の内幕をはぐる
4外す・順番を飛ばす、仙台・山形
5仲間外れにする、山形・福島
6失敗する・間違える、福島・茨城・今度の試験うんとはぐった
君:かなりの多義語化ね。佐七君はこれでも不十分だと言いたいのね。それに「はぐる」って若しかして近代語なんでしょ。
私:急速に多義語化するのは神秘的だね。話をややこしくするもう一つの点としては、自ラ下一「はぐれる」なんていう動詞もある事かな。これは自ラ下二「はぐる」の派生語だ。見失う、の意味。「はぐれる」は複合動詞の後項動詞になって、しそこなう・機会を失う、の意味にもなる。なんと、日葡には・・参りはぐれて礼に参らぬ・・の文例があるんだよ。
君:きりがないわね。
私:「布団を着る」についてもサラリと触れておしまいにしよう。今思うに、平安時代の生活様式のなごりだね。当時と言えば、まさに布団は「着る」という使い方だったのだから。ネットにあれやこれやと画像がある。例えばここ。過去記事はここ。
君:平安時代は若しかして、布団を脱ぐ、という事ね。
ほほほ