大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム 逆接方言学
~やけど(~だけれど)
私:指定の助動詞「だ」は飛騨方言では「や(じゃ)」になる。電話の会話文では「もしもし、佐七やけど。」
君:ほほほ、それって逆接の表現ではなくて、順接ね。
私:その通り。そのあたりは国文法も飛騨方言も変わらない。かたや「好きだけれど、返って遠ざからずにはおられない気持ち」この場合は明らかに逆接確定であって順接ではない。
君:倒置文にしたらどうかしら。「どうして遠ざからすにはおられないのだろう、好きだけれど」。
私:いや、文章としては不自然。それを言うなら「遠ざからずにはおられないのに、好きだとは」。やはり逆接確定の構図は変わらない。
君:ほほほ、わかったわ。「もしもし、佐七やけど。」は単文よ。単文である限りは、次に続くロジックがないので、つまりは逆接とも順接とも言えないというジレンマが生ずるのよ。
私:なるほど。重文と単文の違いか。重文とは、主述関係が成り立つ、対等の資格をもった部分が二つ以上含まれている文。「花咲き、鳥歌う」の類。つまり「花咲けども(逆接確定)、鳥歌わず」
君:そんな理解だけではだめ。条件を並べ立てなければ。
私:条件とは?
君:前の文章と後ろの文章との論理的対立関係よ。
私:ははあ、英語ならは if 文か、although 文か、の違いだな。
君:半分はあっているわね。if 文は仮定、ただし although 文は二分されるわよ。答えは「展開」か「対比」であり、実は後ろの文章の内容がこれを規定するのよ。
私:つまりは逆接確定+展開と逆接確定+対比のパターンがあるというわけか。
君:その通りよ。逆接確定+対比の例としては、都市は人口が多いけれど、農村は過疎化が深刻。
私:なるほど。逆接確定+展開の例といえば、その他という事になるね。「もしもし、佐七やけど、声ではわからんさなあ」とかね。
君:そうそう。その調子。実際には、逆接確定+展開の例は三つばかりのパターンになるわね。
私:なるほど。展開には、当然の展開もあるし、思わぬ展開もある。つまりは二つのパターンじゃないのかな。
君:それは明らかな間違い。逆接確定である以上は当然の展開はあり得ない事。思わぬ展開に三つのパターンがあるのよ。ヒントは主観か客観。
私:なるほど。前の文章の事を言っているんだね。前の文章が主観的か客観的か、という事だ。「おれがお前をこんなに愛しているのに」は前者で、「2は偶数なのに」が後者。やはり二つのパターンじゃないのかな。
君:客観的というのは二分のしようがないわね。ただし主観的文章は話者が後ろの文章を当然そう思う気持ちか(当然)、あるいはそう思わないか(意外)、ここで二分されるのよ。従って全体としては三つのパターン。
私:ははは、なあんだ。そういう事か。doubt / suspect の違いという事だ。英作文のABC。
君:ほほほ、それで正解ね。★二人は長く付き合っていたが、結婚しなかった「客観・意外」、★★例年の同窓会を呼びかけたが、参加が無かった「主観・意外」、★★★彼女が秀平を嫌っているのはわかっているが、どうしても結婚したい「主観・当然」。
私:「客観・当然」は順接そのものであり、逆接表現はあり得ないという意味だね。
君:その通り(単文・当然)。
ほほほ