大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム
かぶた(木の切り株)
私:飛騨方言一般名詞「かぶた」だが、木の切り株の事。全国の方言になっている。
君:「かぶ株」に接尾語「た」が付いただけの話で、面白くもなんともないわよ。
私:たしかにその通り。皮をはいだままの丸い材木を「まるた丸太」「まるたんぼう丸太棒」というからね。丸太のあとに残ったものは「かぶた」というわけだ。
君:表記は株太ね。
私:それがそうでもない。
君:えっ、どういう事?
私:やはり必要なのは文献的考察。「かぶた」は近世語だ。松翁道話、布施矩道(松翁)著 八宮斎編、ここに出てくる。「かぶた株」、意味は木の切り株が転じて利用価値のないもの。和英語林集成、慶応3年(1867年)、にも記載がある。J.C.ヘボンによる日本初の和英辞典。 Kabuta = 切り株。
君:ヘボン式ローマ字のヘボン?
私:そう、 James Curtis Hepburn。日本語の英語表記が今日あるのは彼のおかげ。
君:なんだか「かぶた」に後光がさして来始めた感じね。
私:うん、当然ながら「かぶ株」は和語と言いたいところだが、これが出てくるのは江戸辺り。つまり中世・近世語。「かぶら蕪・鏑」が明らかに古い言葉で、ここから「かぶ」が来ているのじゃないかな。そして近世語・近代語で「かぶた」になり、ヘボンの目に留まる。
君:松翁道話については?
私:紛らわしい書に鳩翁道話がある。天保6年(1835)刊で著者は柴田鳩翁。
君:「かぶた」は要は近世・近代で江戸語・東京語だったものの明治の国語政策で「かぶ株」に先祖返りして、「かぶた株」は方言扱いになったのね。
ほほほ