| 大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム |
| ナスの飛騨方言 |
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私:ナス茄子はナス科の一年草。インド原産だが、重要な果菜として日本でも古来から栽培されている。飛騨方言はナスビ。 君:ナス・ナスビ、両語にどれだけの違いがあるというの?どちらでも通じるわよ。差なんてないわ。 私:その通りといいたい。が然し、どうかな。僕は道楽でこのサイト、早い話が言葉遊び、をやっているが、今のご発言について正しくは、両語にほとんど差は無い、とか、実際上は差は無い、などに言い改めになったらどうですか。 君:そういう言い方を、言葉尻を捉える、というのよ。 私:幾つか質問させていただこう。両語は意味は同じだが音韻が違う。つまり異音同意語。どちらが古いか? 君:三拍が二拍になったに決まっているじゃないの。古いのは、ナスビ、よ。 私:うん、それは概ね正しいね。最も古い記録としては、天平六年(736年)の造仏所作物帳に「茄子壱拾陸斛陸斗玖升」、つまり。ナス16石6斗9升、と書かれている。他に正倉院文書(750年)の「茄子」。後代には茄のひともじが加わる。長屋王邸跡から出土した木簡(770年頃)には「韓奈須比(からナスビ)」「加須津韓奈須比(かすづけかんナスビ)」。つまりは天平時代あたりに日本に伝来したころから、ナス・ナスビ、の両方で呼ばれていたに違いない。偽情報のよくあるパターンとしては、奈良時代にナスビと呼ばれ室町時代の女房詞で「ナス」という決めつけ説。 君:造仏所作物帳の記載は度量衡ね。なるほどね、まずは中国から、ナス茄子という言葉が伝わったという事がよくわかるわ。 私:ははは、これも正しくは茄子という漢字が伝わった、というべきかな。中国の呼び方を日本流に発音するとナスという音韻になったという事でしょう。ここでひとつ、困った問題が生じた。はて、なんでしょう。ヒントは日本語の最小語条件。 君:ほほほ、わかるわよ。日本語は二拍の倍数という仮説ね。二拍の言葉は古代からの重要単語が占めていて、例えば、やま・かは。ナスとて例外ではないわ。同音異義語が多すぎるのが今も古代も変わらぬ日本語の弱点。従って古代に、あっという間に、ナスはナスビと呼ばれるようになった、という事じゃないかしら。 私:だろうね。勝手な想像だが、平安時代あたりは全国津々浦々でナスだったんじゃないかな。やっと方言学の世界にたどり着いたが、ナスの方言量は極めて少ない。二十個程度。そのなかでもナスビは最大派閥で全国共通方言になっている。残りは、接頭語+ナス、あるいは、くろ黒+接尾語、この2パターンに分かれる。方言学的にもう一言、ナスは東日本に多く、ナスビは西日本に多い。若干の東西対立がみられる。飛騨は西側といったところか。 君:なるほど、たかがナスという言葉。されどナスという言葉 私:さてさて、時は流れ、室町時代。宮中に言葉の変化が起きる。 君:室町時代の宮中とは、先ほどの女房詞の事ね。 私:その通り。御湯殿上日記・文明15(足利義政の時代)の記載にナスの記載がある。このころから、ナスビ改め、ナスと再び呼ばれるようになったようだ。つまりは室町時代に先祖返りした言葉なんだ。 君:ナスビの響きはあまり良くなかったのね。 私:それはとてもいい質問だ。ナスも、ナスビも本来の果菜の意味以外に幾つもの違った意味で用いられ続けている。それが国語の歴史。 君:ええ、わかるわよ。 私:いい意味で使う事はほとんど無いね。「このおたんこなす!」とかね。スリの隠語としても有名。巾着袋、つまりは昔の財布、この形が茄子に似ているところから来ていてるに違いない。 君:隠語は使わないに越したことかないわね。ほほほ |
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