大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム 植物
かたくり(飛騨:かたかご)
私:「かたくり」の事を飛騨方言で「かたかご」というが、高山市久々野町渚に「かたかご」という集落がある。
君:久々野町の集落の地名は万葉集にある「かたかこ」に由来するのね。
私:その通り。「かたかこ」は和語名詞だ。結論を急ごう。「かたかこ」が、どのような機序で「かたくり」という言葉に変化したのか、という疑問にお答えしたい。
君:最初の2モーラ「かた」は変化していなので、「~かこ」が「~くり」に変化した仕組みのお話ね。
私:要はそういう事。答えは八坂書房「日本植物方言集成」の記載にある。同書の前に植物方言辞書なし、同書の跡に植物方言辞書なし。唯一無二の書です。方言学の宝庫。
君:結論を急ぐ割には前置きが長すぎるわよ。
私:はいはい、「かたかご」は全国共通方言。本質的な事ではないので地域は割愛する。「かたくり」の方言量は80程度だ。最大派閥が「かた~」の音韻で約50。この50程の「かた~」の音韻群の中の最大派閥が「かたこ・かたご」。つまりは万葉の時代の「かたかご」は後代に「かたこ」に音韻変化したのであろう、という事。
君:若しかして「かたこ」も古語辞典、あるいは万葉集にあるのかしら。
私:残念ながらない。然し乍ら全国各地に「かたこ・かたご」の音韻が多いという厳然たる事実がある。
君:つまりは「かたかこ」が「かたこ」を経て「かたくり」に音韻変化したのではないかと考えたのね。
私:うん。そして実は「かたくり」はユリ科。見た目もユリそのもの。従って「かたこ」の事を「かたこゆり」と言うようになり、「かたこゆり」が「かたくり」に音韻変化して現在に至ったのじゃないかな。驚くなかれ、方言「かたこゆり」は青森(八戸)の方言資料がある。
君:それじゃあ、「ゆり」の語源はどうなのかしら。「ゆり」も和語なの?
私:「ゆり」は和語ではない。「ゆり」の和語は「さゐ佐韋」、古事記(中)に記載がある。「ゆり」は実は古代朝鮮語。高麗・百済の呼び方だ。これが日本に伝わった、つまりは外来語。この洒落た音韻は古代日本人を魅了し、「さゐ佐韋」は死語となり、「ゆり」が日本語になった。それからだろう、「かたこ」の事を「かたこゆり」と呼ぶようになったのは。これが近世語「かたくり」になったのでしょう。
君:なるほどね。一理はあるけれど、証拠が欲しいわね。
私:証拠はない。全ては佐七の古代語ロマン、空想の世界。ふう、この一時間、必死になって蔵書を調べまくった努力だけは認めてほしい。でも、楽しかったよ。
君:つまりは・・若し間違っていたら、御免なさい。
ほほほ