大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム 飛騨の地名考
奥飛騨 vs 益田(ました)
私:表題だが、どう思う。
君:飛騨は広い、という意味ね。
私:一言で言えばそうだ。キーワードを「雪」と限定すれば、また地名対比の意図もわかりやすいでしょ。
君:いきなり、そこのお話に持っていくのではなく、「奥飛騨」「益田」の説明が必要ね。
私:失礼。「奥飛騨」と言えば、奥飛騨温泉郷の言葉が有名だ。高山市上宝町(かみたから)あたりの天然温泉の銀座、北アルプスの麓にて大豪雪地帯といってもいいでしょう。「益田」は旧益田郡の代名詞で、現在は全域が下呂市。別名が南飛騨で、日本の大分水嶺の太平洋側にて、ほとんどといってもいいくらい、雪は降らない地方。ただし、御岳は下呂市に属する。当然ながら大豪雪の御岳は夏スキーが可能なくらい。今回のテーマとしては「益田(ただし御岳は除く)」という意味。
君:要は下呂温泉を代表とする「益田」と奥飛騨温泉郷を代表とする「奥飛騨」のお話なのね。平凡だわ。
私:ははは、そういう皮相なお話ではない。「飛州志」に、奥飛騨とは大野、吉城両郡其山中をさして云へり・至寒深雪の地たり、との記載がある。
君:なるほど、江戸幕府の飛騨という地域に対する見解という事だったのね。
私:その通り。飛騨を三つに分けるとすれば、中心たる高山、南の益田、それ以外の奥飛騨、以上の三分類という事。つまりは江戸時代の概念では御岳の山奥とか、白川郷とか、北アルプスあたりとか、河合村あたりとか、かなり広範囲を奥飛騨ととらえていたという事じゃないのかな。若し間違っていたらごめん。
君:確かめようがないわね。
私:益田よいよの 奥飛騨よりも 風の嵐がそよそよと (転木磨歌 するまうた)。土田吉左衛門「飛騨のことば」。
君:転木とは。
私:転木(てんぼく)するとは、民俗学において、儀礼や信仰、社会、経済などの伝承資料から日常の暮らしと文化を探求する学問を指す。知らなくてもいい言葉。
君:転木為がてんぼく「するまうた」になったという事かしら。ほほほ
私:そんなの知るかい。それはさておき、上記の唄の替え歌バージョンを発見した。益田よいとこ 奥飛騨よりも 竹の林はそよそよと。飛騨の伝承民謡と風土習俗の考察、飛騨調査報告第二報、大谷千尋、名古屋女子大学リポジトリ。
君:出版年から、後者が前者の替え歌である事は明らかね。
私:うん。歌意は二つ共に同じだね。つまりは益田の人々にとっては奥飛騨は辺境の地、最果ての地というわけだ。
君:そんな奥飛騨に住む人にとっては益田は正に南国ね。
私:結構、益田も寒いけどな。
君:あら、下呂温泉があるわよ。
ほほほ