大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム 言語障害(医学)

言語障害、まずは手始め

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私:方言学と大きく離れてしまうテーマかもしれないが、ご容赦を。方言学の些末な文法談義の前に、言語を操るとという事はどういう事なのか、という大脳生理学のお話とか、それが障害を受けたらどうなるのか、というような点について、知っていて損は無いお話をしばらくさせていただきたい。
君:歳と共に語彙が減るのに困ってしまうわ。人のお名前。なかなか出なくて。
私:それは前頭葉の機能低下というものだね。人が覚えられる人名の数はせいぜいが二千名程度、あるいは千人位かな。
君:どういう事かもう少し具体的にお願いね。
私:重度の認知症の老人であっても最後の最後まで覚えていてるのが、つまりは人名の最終砦が、自分の名前だ。人間が自分の名前を忘れる事はない、と言ってもいい。但し、子供や孫の名前を言い間違えたり、友人の名前が出て来ないのは極、普通の事であり、これはあまり悩まなくてもいい。
君:悩んじゃうわよ。
私:人名の言い間違えに気づけばいい。それだけの事。むしろ、脳が効率よく情報処理している証拠と思えばいい。
君:それでも達人がいらっしゃるでしょ。
私:勿論。二つの職業。ヒントは東京。
君:わからないわ。
私:それは銀座のママと帝国ホテルのドアボーイだ。この二つの職業は、何年前に一度だけあった人ですら瞬時に名前が出て来ないとアウトの職業。
君:厳しい世界ね。誰でも務められものではないわね。
私:そんな事はない。実はやる気さえあれば誰にでも出来る。要はコツなんだよ。
君:いいからコツを一言で教えてね。
私:ほいきた。まずは holistic processing。これは脳の心理学の基礎中の基礎。
君:それは説明になっていないわよ。
私: holistic processing に適当な和訳は無い。人間は他人の顔を一万人ほど覚える事ができるという恐るべき潜在能力があるという意味。人の顔は目、鼻、口、等々、各種のパーツからなるが、これをたったひとつの情報であると捉えて一人の人間を特定する能力の事。パターン認識とも違う。沢山の人間の中から、あいつだ、と直感する力の事。
君:なるほど。人間は誰でも holistic processing の能力があるのだから、続いてはその人の名前を何回も復唱したり、或いはノートを作る作業をしたりで、顔とお名前を結びつける努力を惜しまない事ね。そうしたら女性は誰でも銀座のママになれるわ。
私:まさにその通りだ。例えば教師というお仕事だが、教え子は数千人どころか、一万人を超すかも。但し覚えている教え子は数えるほどしかいない。それはごく自然な事なのだけれど、これも脳心理学では flash bulb effect という説明が定説。
君:フラッシュバルブ、なるほどね、あの日の思い出が何年たっても鮮やかに思い出される、感激という意味ね。出来のいい子とか、手こずらせた子しか思い出が無く、平凡な生徒というのは忘れてしまうものなのよね。前頭葉の理性のなんともろい事。
私:実はその考えは明らかに違う。まずは視床下部・大脳辺縁系というものが人間の情動(感激)と結びついているんだ。前頭葉が最重要と判断した情報は視床下部・大脳辺縁系に直ちに書き込まれて(フラッシュバルブ効果)、その人にとっては生涯に渡る重要情報として前頭葉及び辺縁系に刻み込まれる。
君:あらいやだ。記憶を定着させているのは実は前頭葉じゃないのね。
私:その通りだよ。前頭葉は常に知識の整理をしているだけ。つまりクールな存在だ。然も不要と判断する知識は容赦なく忘れるように仕組まれている。ただし重要な知識は絶対に忘れない。この辺りが情動(感激)に密接に関係し、特に視床下部・大脳辺縁系にも書き込まれた記憶は人間は消し去る事が出来ない運命になっている。円の内角は常に一定とか、感激するでしょ。フェルマーの最終定理は小学校では算数として習い、中学校ではピタゴラスの定理として習うとか。
君:あら。それって大事な記憶なのだから、忘れられない事はありがたい事だと思えばいいのじゃないかしら。
私:ところが逆に嫌な事もなかなか忘れられないようななっているんだよ、前頭葉は。あの上司のパワハラ、今でも昨日のように思い出す。何事も物は考えようでございます。
君:嫌な事はさっさと忘れて、楽しかった事は何度でも思い出せばいいのね。 ほほほ

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