大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム 言語障害(医学)
失語 aphasia とは
私:失語 aphasia だが、日本語としてはなじみが少ないし、英語としても日本人には馴染が無いだろう。
君:何事も、言葉には定義があるのよね。
私:まずは日本語で説明させていただこう。一言で言えば、急に話せなくなってしまう事だ。
君:脳の病気ね。
私:その通り。その点だけは百パーセント正しい。逆に言えば、それだけの認識では残念ながら失語の概念を理解できたとは言えない。
君:曖昧な言い方ね。
私:まずは根本的な事から。哲学と言ってもいい。「失う」という事はどう意味ですか。
君:なくなっちゃう、という事ね。
私:違う。「得る」からこそ「失う」んだよ。つまりは、失語という病気は、昨日まで普通に話していた人が急に離せなくなる事を言う。
君:つまりは、交通事故とか。
私:それもあるし、脳梗塞、脳塞栓、脳血管奇形、脳腫瘍、等々、せっかく話せていた人が話せなくなるのが失語。
君:脳発達障害は含まれないのね。
私:その通り。多くは成人の病気。
君:脳梗塞で話せなくなってしまったおかたとか、話に聞くわね。
私:脳のホンの一部分が障害を受けても人は話せなくなる。悲しい事実だ。
君:サピエンスのサピエンスたる所以は言語の獲得、直立歩行、道具を使う事、の三点に絞られると言ってもいいわね。
私:その通り。失語は人間の尊厳に深く関わる問題だ。
君:そんな病気になりたくはないわね。
私:いつどんな病気になるかは誰にもわからない。脳の極、一部の病気である事を考えれば希望はある。つまりはリハビリテーション。言語療法士のお出ましだ。
君:そんな事を言われても。
私:まずは失語の疑似体験をしてみよう。君の第二外国語と第三外国語は。
君:英語とフランス語よ。
私:中学と高校、六年間も学ぶのだから、日本人全員にとって第二外国語は英語。それでも、若しある日に突然、ニューヨークのど真ん中に放り出されたらどうなりますか。教養部でフランス語を一年少々しか学ばないのに突然、パリのど真ん中に放り出されたらどうなるのかな。
君:周りの人のいう事は判らないし、何かを伝えようとしても言葉が見つからないわね。
私:その通り。失語とはまさにそのような状態だ。確かに日本語は聞こえるのだが、その意味が判らないというのが聴覚性失語(ウェルニッケ失語)で、なんとか日本語を話そうとするが話す言葉が日本語になっていないのが運動性失語(ブローカ失語)、あるいは脳の障害が広範囲であると両者の混合という事もあり得る。
君:そういう状態の創造がついても、ある日、突然にそのようになったとしたらショックよね。
私:その通りだ。彼の前頭葉は異常なし、つまりは彼は理性は保たれている。そしてそんな脳の病気とて全てがある日突然にやってくるとは限らない。ラクナ小梗塞といって、非常に小さな脳皮質の壊死が生ずる事だってあるんだ。繰り返し生ずる。ジワリジワリと脳がむしばまれる状態。
君:気が滅入っちゃうわね。
私:だから話題を変えよう。まずは aphasia 失語という用語そのものについて一言。
君:英語の翻訳で明治時代あたりかしらね。
私:英語という回答は厳密に言うと違うんだよ。実は古代ギリシャ語だ。言語学の怖い所で、 a- で否定の意味はギリシャ語、ラテン語だと in- だな。phasia は叫ぶ事、これもギリシャ語。強調という意味で emphasis これもギリシャ語。
君:そんな事、どうでもいいわよ。
私:そういう会話ができる事は二人が失語でない証拠だ。
君:ありがたい事ね。
ほほほ