大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム 脳科学

文法中枢

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私:ブローカ言語野とかウェルニッケ言語野は有名だが、共に左大脳半球にある。あまり知られていないもう一つ重要な言葉に関する部位が文法中枢 grammar center というもので、これもやはり左大脳にある。正確には「左下前頭回(IFG)の背側部」というもので、前頭葉の一部。これの発見者は酒井邦嘉先生。日本の脳生理学者、東京大学教授。(ここ)
君:沢山の内容だけれど、簡単に一言で要約できないかしら。
私:脳は小宇宙とも呼ばれ、とにかく無数の神経細胞の塊で、どこが何をしているかは皆目、見当もつかない。ただし、たまたま極一部分の損傷、これは脳腫瘍の事もあるし、或いは脳梗塞のような事もあるが、極一部分が障害を受けると奇妙な症状を引き起こす事がある。海馬というものが一次記憶中枢である事も或る一人の患者 Henry Gustav Molaison の症状から突き止められ、出版された。文法中枢の発見は特有の臨床症状 agrammatism という病気の患者様の脳の障害部位が糸口という事だろうね。お恥ずかしながら、その辺りの医学史をつぶさに調査したわけではないので、いずれまた。
君: agrammatism とは。
私:a (deny) + grammat (grammar) + ism。話す言葉の文法が乱れてしまう一種の言語障害、失文法(しつぶんぽう)。
君:飛騨方言話者が偽畿内方言、偽京都語を話すのは失文法じゃないわよね。
私:勿論。彼が正しく飛騨方言を話せる限りは失文法の病気ではない。
君:文法中枢は、やはり左大脳半球にあるのよね。
私:その点が重要。右大脳半球にはない。他に重要な点としては前頭葉の一部である事、つまり知性と密接に関係している。ブローカ言語野とも隣接しているといってもいいね。
君:大脳皮質は細かく機能が分かれているようね。
私:その通り。老人になると、なかなか言葉が出なくなったり、言い間違えが多くなったり、前頭葉の機能低下である事は間違いない。
君:老化という事は脳細胞の数が減る、脳が委縮していく、という事かしら。
私:当たらずと言えども遠からず。微小脳梗塞といって、小さな動脈が動脈硬化で閉塞すると、その血管によって栄養されている脳細胞が死ぬ、というわけで、いわばシミ・そばかす・皮膚のたるみ、等々と同じ事が脳表面に起きていると思えば間違いない。
君:何か予防するいい方法は無いかしら。
私:無いね。そうなったら諦めるのが一番だな。そうならないためには酒も煙草もやめ、しっかりと睡眠をとる事だ。キーワードはひとつ。
君:Man is mortal。誰も老化には逆らえないという事かしら。
私:違う。脳は非再生組織だから。死んだ脳細胞は元に戻らない。非再生組織といえば、他には筋肉、腎臓、真皮など。失われたものは戻ってこない。逆に再生組織は表皮、肝臓などで、このような臓器はかってに自己増殖するので iPS の研究があまり必要ない。
君:脳が再生されたとしても神経ネットワークの再生、特に前頭葉、これが問題よね。 ほほほ

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