大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム
アクセントの聞き分け
私:方言学の中でも戦後に盛んになったのがアクセント学。しかし、よくもまあ脳ミソというものはこんな複雑な事を簡単にやってのけられるものだ、と感心してしまうね。
君:花と鼻、これは幼児の頃から弁別できるわね。
私:音声学 phoneticsの知識は必要。ただし、これが判ったからと言ってアクセントの仕組みが判るわけではない。
君:学問は細分されるとキリがないのね。
私:うん。それどころが、先ほどは日本聴覚医学会用語集改訂(2024年10月23日改訂)を渉猟したが、これがおそらく現在(20025/12/08)の最新版になるが、アクセントなる用語の記述はない。
君:アクセントはあくまでも言語学のテーマなのね。
私:その通り。でも言語学の書をあれこれ読んでも脳ミソの中でアクセントというものがどのようにして生まれるのか、という記載はない。
君:こういった時は学際的な疑問は人工知能に聞くのが一番、という時代かしら。
私:いやいや、人工知能は実用化の段階に入ったとは言え、用途は限られる。医学の場合は数十万枚のカプセル内視鏡の画像の一次スクリーニング等の単純作業がまさに人工知能の用途。
君:人工知能はジックリと考える用途には不向きなのかしら。
私:ゲーム、囲碁や将棋など、への応用だが単純ルールの天文学的回数の計算という事であり、ジックリ考えているという事ではないようだね。歳がわかるというものだが、その昔に IBMの人工知能・ワトソンがチェスの名人に勝って(1997)世界一になった事があった。
君:今日の本題にしては前置きが長すぎよ。
私:まずは簡単な質問だが、人間は生涯に脳ミソのホンの一割ほどしか使わない、つまり、もったいないから努力して使い切りなさい、という迷信がある。実際には人間の精神機能は全て脳の隅々、つまり全部の細胞が総動員した営みだと思えばいい。海馬以外の脳細胞は再生しない。生下時から数は決まっている。生後に爆発的に増加するのは、これらの脳細胞間の神経伝達、つまり脳細胞の枝・シナプス、という事。
君:そんな事はいいから、アクセントの仕組みについて簡単に説明してね。
私:うん。両耳から入った言葉はまずは両側の一次聴覚野に届くのだが、その前にピアノの鍵盤のようにずらりと並んだ蝸牛神経がAD変換するところから始まる。一次聴覚野は直ちに意味の解釈を開始し、三つ四つの神経を経由して、つまり数次の情報加工を経て脳の各所に情報を送る。情報が前頭前野に送られた時には既に過去の膨大な記憶情報との照合が瞬時に終り、例えば「さしち」という三つの音韻として認知され、これは私の名前の事だな、という意味付けは当然として、田舎っぽい、とか、我が家の屋号である、とか、これまた無数の意味とのタグ付けが行われる。
君:まだアクセントの話になっていないわね。
私:その通り。実は「さしち」という三つの音韻には高い・低いという情報が付加されていて、これらがマシンガントークのように脳全体にエコーし、左脳にある文法中枢では意味ある日本語としても意味付け・文法解釈作業が行われるし、右脳全体としてはアクセント情報を根拠としたコンテクストの文節の解釈に大わらわで、このあたりでようやく脳は日本語アクセントというものを意識する。
君:意識しただけでは駄目で、前頭葉にアクセントとしてあっています、という信号をフィードバックしないと駄目なのよね。
私:うん。それだけじゃ終りにならない。前頭前野と密接に繋がっているのが偏桃体、別名が感情の中枢と言われるところ、で偏桃体も、快不快の情報を絶えず前頭前野にフィードバックしてアクセント解析に携わっている。
君:随分と複雑で、声から耳に入ってアクセントの認識に至る頃にはとんでもない異次元の情報分析のステージになっているという事なのね。
私:その通り。それこそが脳がアクセントをどのように認識しているか、という問題の解説の前置きだ。さあ、講義を始めよう。
君:もういいわよ。
ほほほ