大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム アイヌ語

さる猿(2)

戻る

私:「サル猿」は倭語であり方言が無い、について。
君:まだ、書く事があるのかしら。
私:倭語というか、より具体的には縄文人(旧石器人類)の言葉だな。
君:つまり弥生人の言葉より古い言葉という事ね。縄文遺跡からサル骨が見つかるからよね。
私:その通り。その骨は旧石器で肉を削いだ跡がついたのもある。捕獲して食用とした証拠。更にはその皮だって何かに利用しただろう。土器にもサルをかたどったものがあって、何か神聖なものとして崇めていたのかもしれない。
君:サルってニホンザルの事よね。日本のみに住む固有種よね。
私:そう。野生のものは本州・下北半島にはいるが、北海道にはいない。なぜ。
君:ブラキストン線ね。
私:そう。サルは元来、熱帯性の動物。下北半島のニホンザルはサルの北限として有名らしい。氷河期に津軽海峡が凍らなかったからだ。サルは海を泳げなかった。
君:そんなサルなのにアイヌ語サロがあるのが不思議、という前回のお話だったわ。
私:言語学の定説では本州語サルの借用では、という事らしい。理由はふたつ。ひとつは北海道にサルは一匹も生息しないから。もう一つは本州語からアイヌ語への借用と考えられる二対の語は大変に多いが、その逆にアイヌ語から本州語への借用は、例えば動物ではたったふたつししかないから。
君:たった二つとは。
私:ラッコとトナカイ。北方の動物だ。
君:トナカイってアイヌ語なのね。
私:これを最初に見た日本人は間宮林蔵だ。樺太探検時の逸話。彼(つまり最初の日本人)が初めて見た奇妙な動物の事をアイヌがトナカイと呼んでいた。彼が江戸に同語を持ち込んだ。ラッコは北海道に生息し、アイヌ語そのもの。
君:逆にサルは純粋に本州の動物なのに北海道のアイヌが知って、サルという言葉を知ったというわけね。
私:交易だね。肉や毛皮がサルと言う言葉と共に北海道に渡ったのだろう。
君:いつの時代かしら。
私:縄文時代は一万年続いたが、その間の可能性が高いと思うかい。勿論、弥生時代なのか、それ以降なのか、勿論、誰にもわからない。実はサルという音韻が北海道に渡ったのは、間宮林蔵がトナカイという音韻を江戸に突然に持ち込んだ例のように、突然の出来事だった可能性だってある。
君:わかるわよ。キャプテンクックがオーストラリア大陸で「あの動物はなんという名前ですか」と聞いたところ、現地人アボリジニが「カンガルー」と答えたお話ね。 "Gangurru."(グーグ・イミディル語で「私には分からない/もう一度言ってください」。言語学の教科書によく出てくる例ね。新しい言葉が文明国で瞬時に広まる好例。 ほほほ

ページ先頭に戻る